御景雑記

雑多に色々書いているだけのブログ。

紅い怪物 -TOYOTA TS020 'GT-one'-

テスト勉強の息抜きがてら、ちょっと自分の好きなレーシングカーについて調べてみることに。

 


f:id:Mikage_932:20160701231749j:image

今回取り上げるのは「TOYOTA TS020 GT-one」(以下当記事ではTS020と表記する)。敢えてここで書くまでも無いとは思いますが、TS020は1998年と1999年のル・マン24時間レース、及びル・マン富士1000kmに参戦し、99年のル・マンでは3号車の片山右京/鈴木利男/土屋圭市組がBMW V12 LMRとの激戦の末に総合2位を獲得したマシンです。ちなみにこの記録はル・マンで「日本人組」が記録した最上位記録でもあり、現在も破られておりません。

 

さて、そんなTS020でありますが、果たして何台が生産され、何台が現存しているのだろうか。先日Twitterで私のフォロワーさんがとあるマシンの行方について考察されていたのに触発され、思い切って調べてみることにしました。

 

 1998年にル・マンに初参戦したTS020。GT1規定を徹底的に読み込んだ上で生まれたこのマシンのロードゴーイングカーは「本当にこれがいいのか?」と物議を醸しだした程、その姿はプロトタイプ然としたものでした。そして最終的には7台のTS020が製造されたことが確認できています。

さて、車検場に現れた「彼ら」の台数は計4台(ロードゴーイングカーと一緒に撮影された写真もあります)。


f:id:Mikage_932:20160701230441j:image

ロードゴーイングカー/27号車(エッソ)/28号車(善都)/29号車(ベンチャーセーフネット)の布陣。「霜降り」とも言われる激しいブラシラインの入ったカラーリングが特徴。後のトヨタF1のカラーリングを紅白反転させたものとも言えますね。

 

この時点で既に6台のTS020が製造されており、その内2台は片方がテストカー、もう片方が万が一の時のスペアカーとして用意されていたのです。そして肝心の結果はというと2台はミッションのトラブルで後退(28号車はクラッシュ)、最終的には27号車のみが完走したのでした。

 

1999年、若干のレギュレーション変更(GT1規定廃止、TS020はLMGTPクラスに移行した為)対応を施した上で再びル・マンの舞台に戻ってきました。

この時現れたTS020は3台でしたが、それぞれ経歴に違いがあったのです。


f:id:Mikage_932:20160701230626j:image


f:id:Mikage_932:20160701230655j:image
f:id:Mikage_932:20160701230648j:image

前年の「霜降り」カラーから一転しシンプルな紅白カラーに彩られたTS020。一切ロゴが入っていませんがMarlboroのスポンサーを受けていたというのは有名な話です(予選時は前面に黒いバーコードラインが貼付けされていました)。

ラインナップはスポンサーの序列が変わり1号車(善都)/2号車(ベンチャーセーフネット)/3号車(エッソ)というものに。

1号車は新たに用意された完全な新車(7台目)で、2号車は前年スペアカーとして準備されたものの出番が無かったもの。そして3号車は前年の28号車としてル・マンを走っていたものという差異がありました。

結果はPPを獲得した1号車がギアボックスの不調で後退しリタイアすると2番手に付けていた2号車が首位争いに浮上。しかし2号車はレースの折り返し地点となる12時間時点で周回遅れと絡んでクラッシュし、リタイア。予選で不運に見舞われ8番手からスタートした3号車は着実にポジションアップし、2日目の正午頃には1-2体制を保っていたBMWの1台がクラッシュし2位に浮上。そこからは片山右京が猛追撃を見せるも左後輪がバースト。トヨタル・マン初制覇の夢はここで潰えてしまったのでした。最終的な結果は冒頭に書いた通りです。

 

ここで使命を果たしきったと思われたTS020。しかし1戦、最後のチャンスが舞い込んできたのです。


f:id:Mikage_932:20160701230740j:image

この年の11月に富士スピードウェイで開かれたル・マン富士1000kmにおいて1台のTS020がエントリーし雪辱戦に望むも黄旗無視などのミスもありまたしても2位。ここでTS020は表舞台から退き、翌年のル・マンに現れることはありませんでした。ちなみにここで走ったTS020はカラーリングこそエッソ仕様でしたがル・マンでの1号車として走った個体になります。

 

以下、TS020のシャシーナンバー及び経歴を記載。現存しているかどうかにつきましては今後調べていく方針です。


f:id:Mikage_932:20160701231430j:image

LM801:テストカー


f:id:Mikage_932:20160701230817j:image

LM802:98年ル・マン29号車→テストカー(F1?)



f:id:Mikage_932:20160701230839j:image

LM803:ロードゴーイングカー



f:id:Mikage_932:20160701230954j:image


f:id:Mikage_932:20160701231308j:image

LM804:98年ル・マン28号車→99年ル・マン3号車


f:id:Mikage_932:20160701231031j:image

LM805:98年ル・マン27号車→テストカー(F1?)



f:id:Mikage_932:20160701231103j:image

LM806:98年ル・マンスペアカー→99年ル・マン2号車(クラッシュ)



f:id:Mikage_932:20160701231227j:image


f:id:Mikage_932:20160701231244j:image

LM907:99年ル・マン1号車→ル・マン富士1000km1号車

 



ちなみに計7台のTS020の内、参戦した3回のレースにおいて完走を果たしたのは全て日本人トリオの乗った個体(LM802、LM805、LM907)のみ。遠からず近からず、縁のある車とドライバーの組み合わせだったのかもしれませんね。

 

参考文献

Racing On 475号 GT1隆盛の時代[ふたたび]

2015年3月16日発行/三栄書房

Toyota TS020 GT-One group GT1 (1998) - Racing Cars

World Sports Racing Prototypes - Toyota chassis numbers

Toyota GT-One - Wikipedia, the free encyclopedia(Latest revision as of 00:01, 5 May 2016)